―これ以上仁王に迷惑かけちゃ駄目
私はひたすら
自分に
自己暗示のように言い聞かせた
不器用な人の不器用な生き方。
仁王が学校に行きたくないのは
私が辛い目にあっているからだ、と分かっているのに
それでも、感情に押さえがきかないのは
きっと心のどこかで、仁王は私を信じていないと疑っていたから
迷惑と思われていると思っていたから
「…ない」
今日は何も、なかった
それが逆に恐怖で。何かあるはずなのに、ないことは
昨日以上にひどいことが待ち受けているんじゃないのか、なんて思ってしまう
あんなこと、言ってしまった以上
仁王には頼れないわけだし
教室、
私の机は昨日よりもずっとずっと綺麗で
何もなかった。
他のコと何ら変わりないように思えた
何もない、っていう幻を見てしまうほど
とても、つらい…ことがあったんだ
机の上、白い花一本
―まるで私が死んだかのように
それは、無言の重圧
言葉ではない、とがったナイフ
空気すらも、私をいやがっているようなピリピリとした空間
こんなとき、仁王がいてくれればどれだけよかったか
なんて、大嫌いだといったはずなのに 後悔。
失ってから、気づくもの
仲間の信頼がどれだけ支えになっていただろう
何気ない日常が、どれだけ心地よかっただろう
そばにいて当たり前だった幼馴染が、どれだけ愛しかっただろう
そして、自分はまだまだ子供だったんだと気づく
今まで、クラスでちょっとでも気に入らないところがあったら
影で悪口をいっぱい言っていたのに
何も言い返さないような、おとなしいこに
何度、言葉のナイフをなげただろうか
結局私も、コイツらがやっていることをやってきていたわけで
責める資格なんてないし
ましてや、うらむことなんて…
ブブブと、ポケットの中の携帯が震えた
開くと、まぶしいばかりの仲間との写真。
関東大会の後、みんなで撮ったんだ。
丸井がピースして
幸村が笑って
赤也が真田の頭の後ろで、ふざけて
柳が満足そうで
桑原が照れていて
柳生がきどっていて
そして、仁王が私の頭を撫でている
すごく、むなしい気持ちばかりだ。
着いたばかりのメールをあける
dear
from 真田
これからは、部活にでる
な。迷惑だ。
それと、仁王を騙すのは
もうよせ。鬱陶しい
やっぱり、私の存在は迷惑なんだ
待ちうけの写真の頃だって、みんな嫌嫌だった…?
あまりのつらさに、それすらも疑わしくなって
写真のみんなも、私をさけているように見えた
1人、屋上に来た
もう何限目かは始まっている
グランドから、黄色い歓声とボールを蹴る音
下から、仁王の声がした
…ん?
「ー!」
仁王だ。
私の名前を呼ぶのはまさしく、仁王だ
「屋上にいるんじゃろう!
さっさと顔出しんしゃい」
「こら、仁王!
今授業中だ!遅刻したヤツが何やってるんだッ」
「やべッ」
「仁王!待って…!」
仁王に待ってほしくて、手を伸ばし
柵から身をのりだしたのが、間違い。
次に見えたのは、仁王のおどろく顔
それと、落ちる感覚
間違いもなく、私は屋上から落ちている
「!」
最後に覚えているのは、彼のぬくもりと体の痛みだけ
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