「丸井ー!」



「…」




シカトかよ




          不器用な人の不器用な生き方。




その時は、(聞こえなかったのか)程度にしか思ってなかったんだ

この先待ち受ける悪夢なんて、想像もしていなかったんだ










「ね、ね、幸村ー…
 宿題やってきた?」


私の言葉は、空気中に消えていった



「ねぇ聞いてる?」





「…」




幸村は何も言わずに去っていってしまった

1人、取り残された私








「ちょっと、みんな何なの!?」






柳に話し掛けても



柳生に話しかけても



真田に話しかけても



桑原に話しかけても



切原に話しかけても



みんな
無言で去っていく






ー…生きとるか?」



「…ニオー」



唯一話しかけてくれたのは仁王で

コイツは家が隣だから、昔から何か気にかけてくれるんだよな

とか、思って






「不機嫌そうな顔じゃのう」



「うん」



のせいか?」



「は??」






私の親友がどうかしたの?

何も、されていないよ?






「オレの、聞いちゃったんじゃ。

 部室に入ろうとしたとき、あいつがみんなに 言っていることを


 【がね、私のことにらんでくるの

  私、何かしたかなぁ…。あいさつしても無視するんだよぉ】

 って。」



「…」



「……、何があったかしらんが、オレは信じるよ お前さんのこと。

 のこと睨んでも無視もしとらんってこと」



「…してないよ」



「わかっとる。ただ…厄介なのは、オレ以外のヤツら全員が


 のほうを信じたってことじゃ…」



「しょうがないよ。」



「何故じゃ?」



「だって、あのコ私よりもかわいいし

 みんなに好かれているし。

 しょうがないんだよ




「……。」



「それとね、仁王。…アリガト」



「何かされたときは言うんじゃよ?」



「うん」









翌朝





朝きたら、下駄箱の中は泥だらけで。

入っているはずのスリッパは入っていない



ついでにいうと、死ねだのいなくなれだの、書いた紙切れがぐしゃぐしゃになって入っていたりもする



…」



「…ベタじゃのぅ…」



「あ、仁王。おはよ」



「おはよーさん。


 オレの予備でよかったら、貸しちゃるけぇ」





こういうとき、仁王の優しさって本当にうれしいな

有難いや







「ね、これ本当にみんながやったのかな」



「…他のヤツらかもな」




「私って、そんなに恨み買ってるの?」



「少なくとも、あのとき部室にいたやつらが全員聞いていたし

 そやつらが、友達とかに言いふらさないとも限らない

 あるいは、オレとかのファンが妬んでやったことかものう」






そういえば、仁王ってけっこうモテるよね

なんて意味もない会話をしながら。教室に入った

入った瞬間、みんなににらまれて

入るのをちょっとためらったら、仁王が背中を押してくれた

『大丈夫じゃよ』

なんていわれているみたいで、嬉しかったよ。






私の机は、もうボロボロで。

たった1つの机にみんなの全ての憎しみが込められているようで

水でびしょびしょに濡れていたり
油性マジックで、中傷する言葉が書かれていたり
黒板消しではたいたような粉がつもっていたり
ゴミ箱をひっくりかえしたように、なっていたり



置き勉していた教科書とかノートは全部なくなってて





「…」



ねぇ、私が何をしたの?



「馬鹿、だね」




誰か、噂が本当だといえるような証拠でも知っているの?




言葉
だけじゃん。






「泣いてもよかと」



「…泣かないよ」




泣けないよ。

みんなの私に対する憎悪が重すぎて

流す涙も出てこない







私の、生きる意味ってあるのかな…


みんなが思うに、私は死んだほうがいいのかもしれない



本当は、望まれていない人間だったんだ。



そしてその夜

私は自分の手首を傷つけた







だけど
血が出るだけで





死ねなかったんだ





そして、そこで初めて気がついた。

自分は死にたがっているということに





「仁王…もうイヤだよ。

 もう、生きたくないよ」



《は?》



携帯電話ごしに




私を信じてくれた人の驚いた声が聞こえる



「部活行っても、誰も相手してくれなかった。

 1人で壁打ちやってたら……真田に帰っていいって言われた…」



《…》




今日、仁王は部活を休んだ




「何で仁王は部活、休んだの?

 仁王がいてくれれば…私は…」



《……。もう、嫌じゃ。

 これ以上が傷つくのはイヤじゃ…》



「……」



《お前を傷つけるテニスなんか、やりとうない》



「…駄目だよ。

 仁王はやめちゃ駄目」



よかと。それが巴のためじゃったら、よかと。》




よくないよ

全然よくない。



ああ、結局私って 生まれてこなければよかったんだ


みんなが嫌いな私

仁王に迷惑をかける私



いつまでも甘えたちゃんで、駄目な私




ごめんね、仁王。









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